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第33話 気づいた女

Auteur: marimo
last update Date de publication: 2026-03-03 20:17:09

同じ夜。

 同じホテル。

 南條沙耶は、ラウンジ奥のソファに腰掛け、グラスの氷を静かに転がしていた。

 照明は落ち着いていて、外からはここが誰の目にも触れない場所だと分かる。

(……やっぱり、来た)

 視線の先。

 窓際の席に、二人の姿があった。

 神崎和真。

 そして――九条綾乃。

 距離は近すぎない。

 触れてもいない。

 だが、空気が違う。

 沙耶は、口元にごく薄く笑みを浮かべた。

(あの男……動いたわね)

 和真は慎重だ。

 派手なことはしない。

 綾乃の“心が弱る瞬間”を、ずっと待っていたはず。

 沙耶は、九条玲司のそばに長くいた。

 その影で、財界の男たちの欲望も、野心も、何度も見てきた。

 ――和真の視線は、優しすぎる。

 庇うようで、

 寄り添うようで、

 逃げ道を用意する男の目。

(欲しがってる)

 綾乃を。

 “九条の妻”ではなく、

 壊れかけた女として。

 沙耶は、グラスを口に運ぶ。

 氷が触れ合う、乾いた音。

(……なるほど)

 綾乃が落ちれば、和真が拾う。

 その構図。

 それは、沙耶が思い描いていた“理想形”と、驚くほど一致していた。

 沙耶の視線が、自然
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